研究概要 |
葉の老化に伴い,Rubisco(CO_2固定酵素)が葉緑体内で分解されることが先の実験から示唆された。そこで,コムギ葉を材料にRubiscoの大サブユニット(LSU)の分解物の葉の老化に伴う量的変動をLSUに対する特異抗体を用いて詳細に検討した。その結果,LSU断片と思われるペプチドが,葉および精製葉緑体の破砕液のいずれからも見い出された。しかし,これらペプチドの種類と量は,サンプルのSDS化処理に際してのpHと時間により大きな影響を受けることが分った。すなわち酸性側の時に種類,量のいずれも多くなり,アルカリ側で少なくなった。また,その分解物のもっとも多い場合の推定量は,Rubiscoに対しおよそ0.1〜0.2%であった。現在は,このようにして現われたペプチド断片が化学的作用の結果なのかプロテアーゼ作用によるのかについて検討している。また,今年度入手したFPLCを使用して,LSU分解物の分離と個々のペプチドの単離を検討中であり,単離後は,そのN末,C末近傍のアミノ酸配列を決定し,分解,切断個所を特定していく予定である。いずれにしろ,In vivoでの分解物の量が極めて少ないことが判明したので,微量分析が必要となった。 一方,葉緑体の老化は,一定程度の核支配のもとにあると言われている。そこで単離葉緑体の実験に加えて,葉肉細胞レベルでの実験を行うための系を構築した。そのkeyとして,コムギ葉からプロトプラストの単離に際し,処理(セルラーゼ,ペクチナーゼ)中における光照射が若い葉,老化葉を問わず,プロトプラストの収率に大きな影響を与えることが分った。その結果,十分量のプロトプラストを得ることが可能となり,現在,プロトプラストを種々条件においた場合におけるRubiscoの分解について研究を進めている。
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