研究概要 |
植物には葉緑体とミトコンドリアという2種のオルガネラが存在し、それぞれ核とは独立したゲノムDNAを持っている。両オルガネラゲノムの遺伝情報システムを解明するために、すでに代表研究者らによりゼニゴケ葉緑体DNAの全一次構造が決定され、解析が進んでいる。一方ミトコンドリアゲノムについては様々な理由から全構造の解明が遅れていたが、本研究においてゼニゴケミトコンドリアDNAの全塩基配列が決定された。これにより、植物ミトコンドリアゲノムの全遺伝容量が明らかとなり、ゲノム構造に関して多くの知見が得られた。しかしながら、ミトコンドリアゲノムの動的遺伝情報システムの解明にはさらに解析が必要と思われる。そこで、ゲノムの構造解析を引き続き行うと共に、同定された遺伝子の発現様式についても調べた。構造解析の結果では、9つのcoxl遺伝子のイントロンのうち5つが菌類ミトコンドリアcoxl遺伝子のイントロンと同じ位置に存在するなど、ミトコンドリアイントロンの進化を考える上で興味深い結果が得られた。また遺伝子の発現様式について調べるために、ノーザンハイブリダイゼーションにより遺伝子の転写解析を行った。NADH脱水素酵素遺伝子群について調べた結果、いずれも複雑な転写パターンを示し、複数の転写開始点の存在や隣接する遺伝子同士の共転写あるいはプロセスを受けていることが示唆された。特に、隣接して存在するnad5,nad4,nad2遺伝子は共転写されていることが明らかとなったが、このような同じ代謝系に属する遺伝子同士の共転写はこれまで植物ミトコンドリアにおいてはほとんど報告されていなかった。
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