研究概要 |
本研究は、高度好熱性細菌Thermus thermophilusの耐熱性生体機能の様々な分野への応用を目指して、T.thermophilusの遺伝学的解析・育種法として有用と考えられる「自然形質転換能」のメカニズムの解析、およびT.thermophilusの染色体地図の作製を目的として行われている。 平成4年度は以下の成果をあげた。 1.形質転換機構の定量的な解析については、核酸要求性変異株を用いて調製した標識DNAの利用により、受容菌に吸着するDNA量、取り込まれるDNA量を定量的に解析するシステムを確立した。 2.形質転換能欠損変異株の分離を試み、十数株の分離に成功した。 これらについて、1.で確立した手法により解析を行ったところ、DNA吸着能欠損株、DNA取り込み能欠損株が得られていることが明らかとなった。 3.変異部位が近接していると予想された変異株間で相互形質転換を行い、形質転換効率の相対値(recombination index(RI))を求め、この数値に基づき遺伝子地図を作製した。 ついで、各変異株から変異部位を含むDNA断片をクローニングし、変異部位を決定することによって上記のマッピングの精度を検証した。 その結果、RIによる遺伝子のマッピングが可能であることを明らかにした。 4.パルスフィールド・ゲル電気泳動法によるT.thermophilusのゲノム解析では、本菌の染色体を比較的少ない部位で切断する制限酵素(rare cutters)を選択し、これらを用いて解析を行うことにより本菌のゲノムサイズが約2,000kdpであることを明らかにした。
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