樹木の健全性の維持の最も重要な要因として、土壌の水分環境が挙げられる。今までの水分生理の研究は蒸散や吸水といった面を植物体のみで扱われ、「土壌水-樹木」という系では捉えていない。そこで、本研究では、「土壌-林木」という系としての水の動態から樹種別の乾燥抵抗性を探りだし、あわせて養分の動態にも検討をくわえた。 1.主な公園樹木であるカツラ、メタセコイヤ、ケヤキ、シラカシの壮齢木を用い、木部圧ポテンシャル(XPP)の季節的変化を調査した。晴れと曇りでは、樹冠上部および下部での水ストレスは大きく異なった。常緑広葉樹は、冬季でも昼間と夜では0.5〜1MPaの違いがみられた。また冬季でもクチクラ蒸散がなされ、昼間でも-1.0〜-2.0MPaの値を示した。常緑広葉樹は雨量の多い年と少ない年で、夜間の水ストレスの回復はわるかった。昼間の蒸散に対する抵抗は、ケヤキやシラカシよりもカツラ、メタセコイヤで小さいと推定された。 2.ケヤキおよびミズナラのポットを用い、乾燥前歴が水ストレスに及ぼす影響について調査した。その結果、短期間でも強度の乾燥の前歴によって、水ストレスに対する耐性が得られると推察された。 3.開葉後の枝からの樹液の採取法を検討した。その結果、夜間の樹液の採取は、降雨後で容易であるが、晴天が続くと吸引圧を高める必要がある。夏の日中での着生枝吸引法による採取は難しく、分析に必要な樹液の採取には切り枝吸引法でよい。樹木の個体別あるいは樹種別の栄養生理的特性、森林地での酸性雨の樹木の衰退に及ぼす情報や地位の良否などに対して、樹液のイオン分析の情報がどの程度有効かは、さらに検討する必要がある。
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