林木の個体間の二酸化炭素交換機能特性の時間依存性

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03454073
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 萩原 秋男 名古屋大学, 農学部, 助教授 (90126889)
• 研究分担者: 小川 一治 名古屋大学, 農学部, 助手 (90224097)
• キーワード: 林木 / 個体レベル / 二酸化炭素交換 / 野外 / 機能のサイズ依存性 / 光合成 / 最小個体 / 自然間引き

研究概要

1.実験林、及び測定方法
名古屋大学農学部構内に植栽されている17年生ヒノキ人工林(平均樹高5.1m)でサイズを異にする5個体について、2台の立木同調同化測定装置を順次、各個体に移し替えながら個体レベルのCO2ガス交換速度を測定した。1個体の測定期間は1週間とし、この期間は昼夜連続測定を実施した。測定は1991年10月から開始した。このCO2ガス交換測定と並行して、測定個体の毎木調査(樹高、生枝下高、生枝下高幹直径、樹高の1割高での幹直径、地際から50cm間隔での幹直径)を実施した。
2.結果
個体レベルで測定された日総光合成速度pg(日地上部剰余生産速度+日地上部暗呼吸速度)は、個体の幹材積vsが大きいほど大きかった。この両者の関係は拡張されたべき乗式[pg=g(vsーvsmin)^h;g,h,vsminは月毎に定まる係数]で良く近似された。この式は、個体幹材積がvsminに近付くにつれ、個体の総光合速度が急激に低下しゼロとなることを示しており、係数vsminはこの林分で生存可能な最小個体の幹材積であることが予想される。本研究で得られたpgーvs関係は林分の総光合成速度を推定するのに有効であるのみならず、自然間引き等の林分動態を解析する上にも興味深い結果である。
本結果はヒノキ林木の成長が止んだ10月以降に得られたものであるので、今後は同様な測定を継続し個体レベルのCO2ガス交換速度の個体サイズ依存性の季節変化、及び年変化を解析し、本研究の目的である個体レベルのCO2ガス交換速度の個体サイズ依存性の時間経過を実験的に明らかにするつもりである。

研究成果

• [文献書誌] Mori,S.: "Root respiration in Chamaecyparis obtusa trees." Tree Physilogy. 8. 217-225 (1991)
• [文献書誌] Paembonan,S.A.: "Longーterm measurement of CO_2 release from the aboveground parts of a hinoki forest tree in relation to air temperature." Tree Physiology. 8. 399-405 (1991)
• [文献書誌] Mori,S.: "Crown profile of foliage area characterized with the weibull distribution in a hinoki(Chamaecyparis obtusa) stand." Trees. 5. 149-152 (1991)
• [文献書誌] 横田 岳人: "立木状態におけるヒノキ林木の呼吸量測定" 日本林学会大会論文集. 102. 523-524 (1991)
• [文献書誌] Mori,S.: "Gross photosynthetic production of individual trees in a Chamaecyparis obtusa plantation." Bulletin of the Nagoya University Forests. 11. 1-14 (1991)
• [文献書誌] Paembonan,S.A.: "Longーterm respiration in relation to growth and maintenance processes of the aboveground parts of a hinoki forest tree." Tree Physiology. 10. 101-110 (1992)
• [文献書誌] Hagihara,A.(A.S.Raghavendra,ed.): "Respiration.In Physiology of Trees" John Wiley & Sons,Inc., 87-110(509) (1991)