研究概要 |
1.実験林及び実験方法 昨年度に引き続き、名古屋大学農学部構内のヒノキ19年生(1993年現在)実験林でサイズを異にする5個体について、2台の立木同化測定装置を順次、各個体に移し替えながら個体レベルのCO_2ガス交換速度を測定した。1個体の測定期間は月に10〜15日間程度とし、この期間は昼夜連続測定を実施した。またCO_2ガス交換測定と平行して、測定個体の毎木調査(樹高、生枝下高、生枝下高幹直径、樹高の1割高での幹直径、地際から50cm間隔での幹直径)を毎月、実施した。 2.結果 個体レベルで測定された年総光合成生産量p[kg(CO_2)tree^<-1>yr^<-1>]及び年呼吸消費量r[kg(CO_2)tree^<-1>yr^<-1>]は個体の幹材積v[dm^3]が大きいほど大きく、これら両者の関係はそれぞれ以下に示す拡張されたべき乗式で表された。 p=g(v-v_<m1n>)^h (g,v_<m1n>,h;係数) r=g'(v-v'_<m1n>)^<h'> (g',v'_<m1n>,h';係数) 上式は、個体幹材積がv_<m1n>(v'_<m1n>)に近づくにつれて、個体の年総光合成生産量及び年呼吸消費量が急激に減少してゼロとなることを示しており、v_<m1n>(v'_<m1n>)は林分で生存可能な最小個体の幹材積と見なすことが出来る。また、係数h及びh'の値はほぼ2/3となり、サイズの大きな個体の年総光合成生産量及び年呼吸消費量は個体の表面積にほぼ比例していると言えた。個体レベルでのCO_2ガス交換速度の測定結果から得られたp-v及びr-v関係は、林分レベルでの物質生産を解析する上で有効であるばかりでなく、自然間引きの機構を個体の物質経済の面から解析する上でも興味深い結果である。
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