1973、74年に熊本営林局によって5個の固定試験地がヤクスギ天然林に設定されている。今回の研究では、平成3から5年にこれらのうちの3試験地(二人だけの小径、花山および白谷試験地)の再測を行った。これに先立ち、すでに2試験地(小花山と天文の森試験地)の再測がすでに完了しており、今回の調査で全試験地の再測を行うことができた。 その結果、次のことが明らかになった。 1)スギを含む針葉樹の断面積の割合は、白谷試験地を除いて、どの試験地とも70〜80%であり、設定時とほとんど同じ割合であった。 2)試験地設定時と今回の調査時のスギと広葉樹の樹高曲線はともに、ほとんど相違が見られなかった。 3)スギの進界木と更新木は、林分内には認められなかったが、広葉樹の低木性の樹種が進界木として多く見られた。 4)スギの成長解析と直径分布の分析から、世代のちがう2種類のスギからなっていることがわかった。 5)全試験地の分析から、スギの年平均の純成長率は-0.26〜0.62%であり、広葉樹のそれは-1.72〜1.19%であった。 6)林分全体の年平均の純成長率は、-0.17〜0.68%であった。 7)現存しているヤクスギが優占するヤクスギ天然林の林分単位の年平均の純成長率は、北海道トドマツ天然林の1.4〜1.9%よりもかなり低い結果となった。 今回の調査から、ここ20年間のヤクスギ天然林の動態を把握する事ができた。貴重な天然林の継続的な調査であるので、今後とも継続的な調査測定が必要である。なお、次回の測定に関しては、今回の調査から約20年後が適当であると思われた。
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