研究概要 |
魚類免疫系の発生過程の解明は,稚仔魚の耐病性機構を解明し斃死という水産養殖上の問題を解決するための手がかりを与えるものとなり極めて重要な課題である。今年度はより詳細な分析を目指す上で必要な抗IgMモノクロ抗体の作成と,免疫した親魚から卵を採取することを中心に研究を進めた。 1)インドネシアナマズの血漿中からHPLCゲル濾過,FPLC Mono-Qによるイオン交換クロマトによりIgMを精製した。これをジチオスレートールによりH鎖とL鎖とに分解し,FPLC Superose 6Bにより分離した。これらでマウス(BALB C)に免疫し,定法によりモノクロ抗体作成を試み,抗H鎖モノクロ抗体を得た。 2)ポリクロ抗体による分析では,非特異的反応を検出している可能性を否定できないが,モノクロ抗体を用いたナマズ卵中のIgMのウエスタンプロッティングによる分析により明確なバンドが認められ,卵中のIgMの存在が立証された。 3)モノクロ抗体を用いてナマズ仔魚リンパ組織におけるリンパ球機能発現過程について免疫組織化学的に観察した。リンパ球の存在は腎臓では孵化後3日,胸腺では5日,脾臓では4週後に認められたが,細胞膜上にIgMを持つ機能的に成熟したリンパ球(おそらくB細胞)は,腎臓では7日,脾臓,胸腺では4週後に初めて認められた。 4)産卵期に致る過程で,マダイ,ニジマス親魚に対してVibrio anguillarumの腹腔内注射により免疫し,受精卵を得た。一年中産卵が可能なインドネシアナマズにおいては,Aeromonas hydrophilaにより同様に免疫し,HCG投与により排卵を誘発し卵を得ることができた。これらの卵における特異抗体の存在については,今後さらに分析を継続する予定である。
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