研究概要 |
初年度は,まず,世界各国で取り組まれている底曳網の分離漁獲に関する文献と水中カメラで撮影されたビデオの収集を行い,分離漁獲の総説と底曳網の漁獲機構に関するビデオを作成した.これによって,分離漁獲に重要な問題が,対象とする魚種の網に対する行動と遊泳能力,網内の流れを制御するための漁具の構造,網やグリッド等のセパレ-タ-の選択性であることが明らかとなった.また,これらの総説とビデオは学生や漁業者の教育用や研修用の資料に利用した. 次に,日本での分離漁獲の例として,東京湾の小型底曳網で,シャコとゴミ(主にスナヒトデ)の分離漁獲の実態を調査した.この漁具は,通常のコッドエンド(漁主者の呼称「たまり」)の上部を大きな目合の仕切網として,その上側に第二のコッドエンド(呼称「小袋」)を装着されている.この構造により,遊泳能力のあるシャコや魚類・エビ・カニ類は仕切網に抜けて「小袋」で,またスナヒトデや魚の死骸は「たまり」で漁獲される.さらに,この東京湾型の小型底曳網漁具の模型を作成し,回流水槽内で網内の流向を観察した.その結果,網内で水は,ごく一部が側網から抜けるほか,ほとんどが仕切網を抜けて小袋に流れることが明かとなった.この模型実験では,次年度に,さらに詳しく網内の流れを計測して,解析する予定である. 大分県の小型底曳網に用いられている3重袋網の分離漁獲実態を調査した.この漁具ではゴミトリ(4節)から中網(9節),魚捕(15節)と徐々に網目を細かくして漁獲物をふるい分けて分離している実態が明かとなった.また,網の各部位にポケット網を装着して,魚種別の網からの脱出部位を調査した.この結果,ほとんどの魚種がコッドエンド上側に抜け,袖網部分から横側に抜けるのはエビ類だけであることが明かとなり今後の魚エビ分離網の設計上の基礎資料が得られた.
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