研究概要 |
前年度に,底曳網の各部に装着したポケット網の漁獲実験から,エビ類の脱出部位はコッドエンド以外に袖網であり,魚類はこの袖網を抜けないことが明かとなった。この結果より,両袖網部位を大目網のセパレーターとしてその外側にエビ類用のコッドエンドを装着した底曳網を作成して,その性能を調べる操業実験を行った。エビ類用コッドエンドでは,エビ類の割合が高かったが,若干の遊泳能力の小さいと思われる小型魚が混獲され,今後,さらに改良が必要と考えられる。なお,全体の漁獲量は,現在使用されている底曳網と差は認められなかった。こうした網のセパレーターを用いて魚種分離を行うために必要な漁獲対象の小型エビ類に対する網目選択性を求めた。サルエビ,アカエビ類では同様の網目選択性曲線を得たが,体が細いスベスベエビでは同じ頭胸甲長でも網目選択率がやや低く,エビ類の網目選択性が体の形状により異なることが示唆された。瀬戸内海東部の小型オッタートロールで菱目袋網と角目袋網の比較操業実験を行い,それぞれエビ類とマアナゴの網目選択性曲線を求めた。マアナゴは魚体最大胴周とほぼ一致する網目を抜け,菱目と角目で網目選択性に大きな差は認められなかった。一方,小型エビ類では,東京湾の小型ビームトロールでのシャコでの結果と同様に,角目袋網で若干網目を抜け易いことがわかった。 ノルウェーで開発され,セパレータとしてグリッドとキャンバスを用いた分離方式を持つ底曳網sort-Xの模型を作成し,回流水槽内で網成と流れの観察実験を行った。この結果,sort-Xに装着されたキャンバスによって網成が崩れることが明かとなった。この点を改良する方法として,キャンバスの替わりに細目網を用いれば良いことを明らかにした。また,グリッドを用いた魚エビ分離トロールの設計と作成を行ったが,本年度内での操業実験は完了しなかった。
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