研究概要 |
伊豆半島、伊豆諸島、九州沿岸および四国沿岸で海綿動物273検体、腔腸動物32検体、外肛動物7検体および原索動物26検体を採集した。各検体の熱メタノール抽出物をクロロホルムと水で分配し、脂溶性および水溶性画分を調製した。それぞれの画分についてトロンビン、トリプシンなどのセリンプロテアーゼに対する阻害活性を常法により調べた。その結果、海綿動物45検体、腔腸動物5検体および原索動物5検体に活性が認められた。なお活性は水溶性画分に多く認められたが、脂溶性画分にも活性を示すものがあった。 そこでまず、上記スクリーニングで水溶性画分が強い活性を示した八丈島産海綿Theonella sp.から活性物質の単離と構造決定を試み、トロンビンをIC_<50>2.8μg/mLで阻害する活性物質を得た。Nazumamide Aと命名したこの物質の構造は、アミノ酸分析およびNMR等のスペクトル分析から、N-末端に2,5-ジヒドロキシ安息香酸が結合した特異なテトラペプチド(1)と決定した。 つぎに、八丈島産海綿Toxadocia cylindricaから活性物質の単離と構造の解析を試み、IC_<50>6.5μg/mLでトロンビンを特異的に阻害する活性成分を得ることができた。Toxadocial Aと命名したこの物質の構造は、長いメチレン鎖の繰り返し構造を持つため、NMRの解析のみでは構造を明らかにできなかった。そこで加水分解後、ジラール試薬PおよびTの誘導体に導き、FAB MS/MS分析して、全構造を2のように決定した。
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