研究概要 |
新生仔牛と仔豚のロタウイルス性下痢症は,初乳中の移行抗体が急激に消失する,生後3〜4日頃に発病率が最も高い。一方,仔馬のロタウイルス性下痢症は,毎年春〜夏に多発する傾向があり,発病には日令,ウイルス性状,ストレスなど多くの要因が影響する。本研究はこれら諸問題の解明のため企画し,本年度は次の成績が得られた。(1)雄仔牛を飼育するA牧場と,黒毛和牛を飼育するB牧場で,ともにロタウイルス性下痢症が集団発生した。A牧場からは3株,B牧場からは5株のロタウイルスが分離された。これら全株は,単クロン抗体での酵素抗体法で,血清型6型,亜群Iを示した。ウイルス2本鎖RNAの電気泳動像において,泳動度に著明な差の現われたRNA分節7,8,9,11の差から,5種の泳動型に分類した。A牧場ではI,IIおよびI,III,Vの混合型が,B牧場ではI,IVおよびI,IVの混合型が,それぞれ認められ,複合した混合感染の存在が証明られた。(2)1987年春,一軽種馬牧場で,幼駒下痢症の集団発生があり,下痢便より51株のロタウイルスが分離された。このうち49株は,同一のウイルスRNA泳動像を示し,血清型3型と同定された。残る同一性状の2株中1株CCHー3)は,血清型1〜12型の単クロン抗体とは反応せず,2本鎖RNAも49株のそれとの間で,分節1,6,8,9,10で異なっていた。さらに1986年と89年の同一牧場での流行3型ウイルスとは,分節4,5,7,11に差を認め,RNAーRNAハイブリダイゼションでも3型ウイルスとは数本のバンドを形成したが,他の動物由来ウイルス株とは反応しなかった。すなわち,CHー3株は馬由来のウイルスではあるが,3型ウイルスによる幼駒下痢症の発生時に,一時的に当牧場に侵入したものの培養細胞での増殖性の悪いことから考え,ウイルス伝播力の差などにより,馬の間に定着できなかったものと推察された。
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