研究概要 |
新生仔牛のロタウイルス(RV)性下痢症は、初乳中の移行抗体が急激に消失する頃に発生し、仔馬のそれは毎年春〜夏に多発するが、発病には日齢・ウイルス性状・各種抗体など多くの要因が影響する。本研究ではその解明を試み次の成績が得られた。(1)本学付属農場のように、他牧場と牛の交流がない閉鎖牧場での飼育牛における、牛ロタウイルス(BRV)感染症について検討した。1992-93年間に生まれた仔牛56頭より、延べ総数219例の糞便を採取した。そのうちの32例(14.2%)からBRVが分離された。このBRV32株は全て生後2-6週齢の仔牛より分離され、また下痢発症の仔牛は、生後3-5週齢において、BRVに対する糞便中のIgA,Ig抗体価はともに、正常仔牛のそれに比較して常に高く、特に3週齢で有意な差が認められた(P<0.05)。即ち、新生仔牛は2-3週齢時に最もBRVに感染し易いことを示唆した。今回分離のBRV32株と、本牧場で1990-91年間にすでに下痢発症仔牛の糞便から分離し保存中のBRV3株とを加えた、全35株のウイルスRNA電気泳動像は11分節で同一パターンを呈した。またこれらは各抗RV血清との交差中和試験とpolymerase chain reaction法による血清型別でG6P11と同定された。この血清型はこれまで仔牛下痢症の原因とされたG6P5BRVとは異なり、また単一遺伝子のBRVが数年間に亘り閉鎖状態の牛に伝播したことは、牛におけるロタウイルスの生態学的特性を知る上で極めて興味深い成績である。(2)一軽種馬牧場で1987年、G3馬ロタウイルス(HRV)による幼駒下痢症の発生で、これまで当牧場の常在ウイルスとは異なるRNA電気泳動像を示す小流行ウイルス株(CH-3)を分離した。このCH-3株は既知のG1-G14 RV との交差中和試験及びウイルス蛋白VP4,VP7のアミノ酸配列によりよる血清型別で、VP7ではG14,VP4ではHRV-H2株に類似した。今回のこの血清型HRVの分離は我が国では初めてである。
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