研究概要 |
馬と牛のロタウイルス(RV)感染について、伝播RVの生態と抗原構造の特性を遺伝子レベルで解明するとともに、馬のRV感染予防と、牛のRVに対する腸管免疫と下痢発症の関係についても検討し、RV感染の発病機序と感染防御を考察する上に重要な参考資料を得た。(1)1986-91年間に一軽種馬牧場で集団発生した幼駒下痢馬から馬RVを分離同定したが、各年の代表RV6株はRNA電気泳動像が類似し、RNA-RNA hybridizationでも高い相同性がみられ、同一血清型(G3)で特定遺伝子のRVが本牧場に長期間定着し伝播し続けた。(2)1987年上記牧場での血清型G3RVによる集団下痢症で、常在RVと異なる小流行RV株(CH3)を分離同定し、この株は馬由来遺伝子の特徴を有し、一時的に本馬集団に侵入したが,伝播力の差などによって馬に定着できなかったと推定された。(3)CH3株はG14馬RVのFI23株と強い交差中和反応を示し、VP7のアミノ酸配列でもFI23株と高い相同性を示し(93.3%)、VP4では馬RVのH2株のそれに類似した(97.0%の相同性)。この型の馬RV分離は我が国では初めてである。(4)1987年と1989年に上記軽種馬牧場で、G3RVによる幼駒下痢症が集中発生し、1989年には全子馬に牛初乳の免疫グロブリン(Ig)パウダーを投与した結果、〓患率(41.5%)は、Igパウダーの非投与の1987年の罹患率(75.9%)に比べて低下し、Igパウダー投与がRV性下痢症をある程度予防できた。(5)肉牛牧場で1988年冬に子牛下痢症が発生し、糞便より8株の牛RVが分離同定され、全8株は亜群I、血清型G6と同定されたが、RNA電気泳動でRV株の混合感染がみられ、遺伝子分節の組み換えRVの出現が示された。(6)閉鎖牧場で1990-93年に子牛下痢便より35株のRVが分離され、このRNA電気泳動像は全て同一で、血清型もG6P11と同定され、数年間単一遺伝子のRVが一牧場に伝播し続けたことは、RVの生態を知る上で極めて興味深い。下痢子牛のRVに対する糞便IgA,IgG抗体価は、3-5週齢で正常子牛に比べ有意に推移し、新生子牛はこの週齢で最もBRVに感染し易いことが示唆された。
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