研究概要 |
猫の体幹筋運動ニュ-ロンの第1腰髄節内ないし第3腰髄節内における髄節内シナプス応答を調べた。 37頭の成猫を用い、左右の軸上筋(腰多裂筋、腰最長筋、腰腸肋筋)と軸下筋(外腹斜筋、腹直筋)の筋神経、2種類の皮膚神経の計12種類の末梢神経の分離、ラミネクトミ-、除脳はネンダ-ル麻酔下で行い、除脳後はネンブタ-ルの追加投与は中止し、筋弛緩剤(臭化パンクロニウム)投与を行い、人工呼吸で細胞内記録を実施した。実験中、血圧(80mmHg以上)、CO_2濃度(4%前後)、体温(38C後前)は常にモニタ-した。体幹筋運動ニュ-ロンの細胞内記録では、それぞれの末梢神経を閾値の倍数(1.2,1.5,2,5,10,20)で電気刺激し、その反応を直接、ないし20回平均加算して調べた。 腰多裂筋運動ニュ-ロンは、同側の軸上筋である腰最長筋と腰腸肋節の末梢神経からの入力に対しては促通性反応(100%と84.6%)を示した。反対側の腰最長筋、腰腸肋節の末梢神経からの入力に対しては促通性反応しか認められなかったが、反対側の腰多裂筋末梢神経からは促通性反応が66.7%、抑制性反応が22.2%、無反応が11.1%と、同じ軸上筋ながら、腰最長筋、腰腸肋筋からの入力とは異なる反応を示した。同側の軸下筋である外腹斜筋末梢神経からの入力に対しては、促通性反応、抑制性反応、無反応が、それぞれ、36.4%,9.1%,54.5%,腹直筋末梢神経からの入力に対しては、それらが16.7%,33.3%,50.0%であり、抑制性反応の認められたのが特徴であった。 しかし、腰多裂筋以外の軸上筋(腰最長筋、腰腸肋筋)と軸下筋(外腹斜筋、腹直筋)の運動ニュ-ロンは、それぞれの筋神経からの入力に対して、促通性反応を示す比率が圧倒的に多く、猫の髄筋内シナプス結合様式は、後肢や前肢の運動ニュ-ロンに比べて、抑制性反応の少ないのが特徴であった。
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