研究分担者 |
廉沢 剛 東京大学, 農学部, 助手 (70214418)
西村 亮平 東京大学, 農学部, 助手 (80172708)
中山 裕之 東京大学, 農学部, 助教授 (40155891)
沢崎 徹 東京大学, 農学部, 助教授 (00012047)
竹内 啓 東京大学, 農学部, 教授 (90011874)
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研究概要 |
今年度は慢性蹄葉炎ないし臨床的症状を伴わない準臨床レベルの蹄葉炎が,蹄葉炎に特徴的な蹄異常を示さない乳牛の蹄にどの程度存在するかを把握するための研修を主として実施した。実験には屠場から採取した乳牛45頭の243蹄を供した。これらに対し,まず外観の異常の有無を検索するとともに,蹄底の蹄真皮を主体に病理組織学的検索を行った。 成績は以下の通りである。 1)蹄の外観では,多くは過長蹄であり,蹄底潰瘍などの重大疾病を呈した数蹄を除き,軽度の蹄球びらん,白帯異常などが散見された。また,これらを削蹄すると慢性蹄葉炎時に高頻度に出現するといわれている角質の出血斑が多数の蹄に認められた。 2)病理学的には,蹄真皮には様々な程度で循環障害ならびに角化異常が認められ,その程度からこれらを5段階(GradeI〜V)に分類した。GradeIの病変はきわめて軽微であるが,GradeIII〜IVでは真皮に高度のうっ血,血栓など循環障害を示唆する所見と著明な角化亢進が認められ,従来報告されている慢性蹄葉炎と良く一致する所見を呈した。 3)GradeVに分類された蹄は,蹄底潰瘍等の角質病変の存在するものが多かったが,これらでは病変部からの感染と同時に前記の慢性蹄葉炎を示す所見も高度であったことから,これらの角質病変は慢性蹄葉炎に伴う角質形成異常が大きな要因となっていることが示唆された。 4)検索した243蹄中,GradeIII〜IVに分類されたものが29%あり,またその前段階にあるいわゆる準臨床レベルの蹄葉炎と考えられるGradeI〜IIが52.9%と高率を示したことから,我が国の乳牛には高率に慢性ないし準臨床レベルの蹄葉炎が存在すると思われ,これが種々の蹄疾患の重大な発生要因になっているものと推測された。
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