研究概要 |
胎生肝は胎生時代における重要な造血器官である。その機構を明らかにするために我々は胎生15日のBALB/cマウスの肝臓から上皮細胞クロ-ンを樹立し、その株細胞が持つ造血支持機能の解析を行った。 マウス胎仔肝臓由来上皮性細胞株(FHCー4D2)は、形態学的特徴(電顕でデスモゾ-ムを有する、微小胆管様構造が形成される、等)や免疫組織学的検索により(初代培養でaフェトプロテイン及びアルブミンが上皮細胞に検出される)、胎仔肝の肝細胞由来であることが判明した。 胎仔肝や骨髄から造血細胞を調整し、それらを4D2クロ-ンの単層上で3日から4週間共存培養し、非付着性細胞中のCFUーGM、BFUe、CFUmixの数をコロニ-形成法で測定した。4D2クロ-ンは成熟マウス骨髄細胞中のCFUーGMおよび胎仔肝臓細胞中のCFUーGM、BFUe,CFUmixを4週間にわたり維持することができた。骨髄細胞および胎仔肝臓細胞と4D2クロ-ンをメンブレンで隔てて共存培養すると、3日目ではCFUーGMの維持に影響はなかったが7日目ではCFUーGM、BFUe、CFUmixが維持されなかったことから3日間の共存培養では4D2クロ-ンの産生する液性因子が、7日間の共存培養では4D2クロ-ンとの接触が造血前駆細胞の維持に重要であることが明らかとなった。そこで4D2クロ-ンの産生するコロニ-刺激因子をSephacryl Sー200カラムで分画したところ分子量が400kD、80kD、40kDの3つのピ-クが得られ、400kDと80kDの分子は抗MーCSF抗体で中和され40kDの分子は抗MーCSF抗体で中和されることより4D2クロ-ンはMーCSFとGMーCSFを産生しており、それらが3日間の共存培養でのCFUーGMの維持に関与するものと考えられた。
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