(1)肝細胞ギャップ結合の分子構築:モルモット肝臓ギャップ結合のレプリカ観察では、抗Cx26抗体により細胞質側表面は極めて密にかつ広範にラベルされていたが、抗Cx32抗体ではdensityがかなりsparceながらやはりdiffuseなラベリングを認めた。これよりモルモット肝では、ギャップ結合斑全体に存在するCx26の間にCx32が介在しているパターンが示唆された。ラットでは逆に抗Cx32抗体で細胞質面が全体にわたって一様に密にラベルされ抗Cx26抗体ではdensityがかなりsparceなものから比較的高密度のものまで存在し、一部にはラベルされないギャップ結合も認めた。またラット、モルモットいずれの場合にも細胞質面の局所的なラベリングの集合や、patch状の分布は認められなかった。以上の結果より、単一の肝臓ギャップ結合班におけるCx32とCx26の分布は、相互に隔離されたモザイク状のパターンではなく、ランダムに組み込まれて膜中に混在する分布様式が示唆された。つまりギャップ結合斑のなかでCx26とCx32が共存する場合には、互に混在していると結論される。しかしその混在がギャップ結合の単位粒子レベルなのか-すなわちチャンネルがCx32とCx26の両者からなるheteropolymerであるかどうかについてはさらに検討中である。 (2)水晶体線維ギャップ結合のディープエッチ免疫電顕的観察:水晶体線維ギャップ結合は、その構成蛋白質(コネキシン)としてMP70が有力視されていたが未だ不明の点も多い。我々はディープエッチング法を用い、牛水晶体線維ギャップ結合の細胞質側表面の微細構造を分離細胞膜にして観察した。この分離細胞膜をprotease V8処理にてMP70が細胞質側領域を失いMP38に分解したことがSDS-PAGEにて確かめられた試料についても同様の観察を行った。水晶体線維ギャップ結合の細胞質側表面は顆粒状構造で覆われており、各々の粒子はコネクソンの細胞質側領域に相当するものと思われた。MP70に対するモノクローナル抗体を用い、ギャップ結合の免疫電顕観察をおこなうと、この抗体はネガティブ染色、超薄切片、ディープエッチングのいずれの電顕観察法によってもギャップ結合を特異的に認識していることが判明した。ギャップ結合をプロテアーゼ処理し、MP70のエピトープを含む細胞質側領域を切断すると、この抗体による認識は消失した。しかし、形態の上ではプロテアーゼ処理後も細胞質側表面の顆粒状構造は保たれており、水晶体線維のギャップ結合においてはMP70以外の物質もコネクソン構造の形成に関与している可能性が示唆された。
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