研究概要 |
本年度は、ブタ腎より精製した電子伝達フラビン蛋白electron-transfer flavoprotein(ETF)のアポ蛋白(apoETF)につき以下の研究を行った。 ApoETFは二種の構造(A^*,A)の間の平衡で存在しており、その一方(A)のみがFADと結合する。反応式は、A^*(] SY.dblarw. [)A,A+FAD(] SY.dblarw. [)holoETFと表わされる。この事を踏まえて、本研究ではFAD-apoETF間の相互作用を明らかにするためATP,ADP,AMP,FMN,リボフラビンとapoETFとの反応を調べた。ATP,ADP,AMPは上述のFADの結合機構と全く同じ反応機構でapoETFと結合し、またこれらのアデニンヌクレオチドはFADの結合を競争的に阻害した。この事からFADの結合にFADのADP部分が重要である事、またapoETFのA^*→Aの変化に伴ってADP結合部位が形成される事が明らかとなった。 FMNとリボフラビンはapoETFに結合せず、またapoETFとアデニンヌクレオチドの複合体にも結合しなかった。この事から、イソアロキサジン環がapoETFに取り込まれるためにはフラビン分子がADP部分を含んでいる事が必須であることが分かった。 FADの結合速度定数は、ADPの結合速度定数の1/20であった事からFADのリボフラビン部分が立体障害によって結合を遅くしていると考えられる。一方、apoETF-FAD複合体の解離速度定数は、apoETF-ADP複合体の解離速度定数の1/1000であった事から、FADが一旦apoETFと結合すると、そのリボフラビン部分は複合体を安定化するように働くことが明らかとなった。
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