研究概要 |
1.イオン電極、蛍光色素実験: 食用蛙二重灌流腎を用いて、カテコラミン(ノルアドレナリン,NAとドーパミン,DA)やアンギオテンシンII(AGII)の腎尿細管直接作用とその受容体ー細胞内メッセンジャー機構をしらべ、以下の結果を得た。すなわち、NAはα_2受容体を介してサイクリックAMP(cAMP)を抑制してNa^+の細胞内侵入(吸収)を促進し、H^+の分泌を促進させる。またα_1受容体を通じてIO_3を動員して細胞内Ca^<2+>を高める。生理的濃度のAGIIはアンギオテンシン受容体を介してcAMPを抑制してH^+分泌を促進させる。それに対して、高濃度のAGIIはIP_3を動員して細胞内Ca^<2+>を増加させる。DAはD_1受容体を介してcAMPを増加して、Na^+の細胞内侵入を抑制し、H^+分泌を抑制する。なお、細胞内ではH^+とCa^2の間に相反関係があり、細胞内pHが上昇すると細胞内Ca^<2+>が増す。逆に細胞内pHが低下すると、細胞内Ca^<2+>が減少する。このことから細胞内小器官は細胞内のH^+とCa^<2+>に対する緩衝系を形成するのみならず、これらの細胞内調節イオンの細胞外への排出をも制御していると考えられる。 2.パッチクランプ実験: 腎近位尿細管由来の培養細胞(オポッサム腎由来、OK細胞)を用いて、最近クローズアップされて来た陰イオンチャネル、特にCl^-チャネルについて検討した。その結果、inside-out patchではcell-attached patchで見られなかった外向き整流性を示すCl^-チャネルが、約5%のパッチ膜においてみられ、単一チャネル電流は65pSであった。また、Whole-cell recordingにおいて、低張処理により著名なCl^-コンダクタンスの活性化がみられ、DIDSにより可逆的に阻害された。さらに最近の結果では、低張処理によるCl^-コンダクタンスの活性化は細胞内のpHによって調節され、酸性化させると抑制され、アルカリ化させると低張処理を行うことなくCl^-コンダクタンスの活性化がみられた。また以前見つけた低張処理後のoutside-out patchにおける単一チャネル電流20pSのCl^-チャネルがやはり細胞内のpHかCa^<2+>により調節を受けている可能性が強い。以上の結果より、OK細胞には少なくとも2種類のCl^-チャネルが存在し、これらはCl^-輸送機構に関与しているものと考えられ、今後Cl^-の再吸収機構とその調節機序を解明する手がかりを得ている。
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