脊髄抑制性シナプス受容体分化過程のパッチクランプ解析

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03454128
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 高橋 智幸 京都大学, 医学部, 講師 (40092415)
• キーワード: パッチクランプ / スライス / IPSC / チャンネル / グリシン / 個体発生 / 脊髄 / 受容体

研究概要

胎生18日ー生後3週齢のラット脊髄腰膨大部から厚さ120μmの横断スライスを作成し、ノマルスキ-顕微鏡下に脊髄後角ニュ-ロンの細胞体を直視同定して、パッチクランプ記録を行った。現在までに得られた結果は、以下の通りである。
1.抑制性伝達物質グリシンにより誘発されるグリシン受容体チャンネル電流の解析:スライス後角ニュ-ロンよりoutsideーout patchを形成し、2ー4μMのグリシンを投与して、単一チャンネル電流を記録し、コンダクタンスおよびキネティックスを解析し、次の結果を得た。(1)グリシン受容体チャンネルは、常に異なるコンダクタンス間を移行しており、少なくとも4種類のコンダクタンス状態が存在する。(2)チャンネル平均開口時間は、個体発生と共に短縮する。
2.シナプス電流下降相の解析:(1)wholeーcell記録により観察される抑制性シナプス電流(IPSC)の下降相に、単一チャンネルの閉鎖によりもたらされるステップが認められた。このステップのサイズは、4種識別され、各値は、グリシン誘発性チャンネルのコンダクタンスにおよそ一致した。(2)IPSC下降相の時定数は、個体発生に伴って短縮した。
3.卵母細胞に発現したグリシン受容体との比較:グリシン受容体αサブユニットの内、成熟型α1、胎性型α2をコ-ドするcRNAをそれぞれ卵母細胞に注入して発現した受容体チャンネルの性質を解析した。(1)α1、α2受容体チャンネルはいずれも複数のコンダクタンスレベルを示した。(2)α2チャンネルと比較して、α1チャンネルの平均開口時間は、顕著に短かった。個体発生途上では、α1からα2へスイッチングすることによりチャンネルのキネティックスが短縮し、IPSCの時間経過の短縮をもたらすと結論される。

研究成果

• [文献書誌] T.Takahashi: "Singleーchannel currents inderlying qlyanergic inhibitory postsynaptic responses in spinal neurons." Neuron. 7. 965-969 (1991)
• [文献書誌] T.Takahashi: "The minimal inhibitory synaptic currents eooked in neonatal rat motoneurones." J.physiol.(London). (1992)
• [文献書誌] Y.Hori: "Presynaptic inhibitory aetion of enkephalin on exuitatory transmission in superficial dorsal horn of rat spinal cord." J.physiol.(London). (1992)
• [文献書誌] T.Manabe: "Membrane currents recorded from sexually dimorphic motoneurones of the bulbocavernosus muscle in neonatal rats" J.physiol.(London). 440. 419-435 (1991)
• [文献書誌] T.Takahashi: "Mulfiple glycine receptor channels in neonatal rat spinal neurons" Jpn.J.physiol.(Suppl). 41. S4 (1991)
• [文献書誌] T.Takahashi: "kinetic ohifference of glycine receptorーchannels expressed in xenopus oaytes by in jection of messengh RNAs encoding adult and neonatal alpha receptor subunits." Neurosci,Res.(Suppl.). 16. VII (1991)