大人アカゲザル(2頭)に遅延反応(視覚到達課題)を教え、46野と6野にGABA_AとGABA_B阻害剤を微量局所注入したところ、6野ではビククリンとファクロフェンで、反応時間の延長と正答率の低下があった。46野では、ビククリンで正答率の低下がみられた。子供アカゲザル(3頭)では、6野でも46野でも同様の注入で、正答率の低下がみられた。大人と子供とでファクロフェンの効果が異なるため、この事を確かめなければならず、眼位測定下での訓練、学習過程でのニュ-ロン活動の変化を調べる所まで研究は進まなかった。 コザルの遅延反応の学習過程でのビククリンとファクロフェンの効果は、大人に必要な量の半分程度であった。但し、訓練の開始直後(生後4カ月)では正答率が50ー60%で、保続エラ-が多いが、局所注入で成績の低下は、はっきりとはみられなかった。この事は、生後4カ月で学習成績の悪い時には、GABA抑制が十分働いていないためと考えられた。 遅延反応へ移行する前に、スクリ-ンのない遅延反応(サルの眼前にアクリル板をおき、報酬のリンゴ片を不透明なビンのフタ2つの内のどちらかの下に隠す。サルは板に遮られて報酬に手を出せず見ている;かくしリンゴテスト)を行わせると1〜3カ月で遅延3秒の学習が成立した。その経過で使用する手と反対側のフタへの正答が減少した。つまり、サルは手と同側に間違って手を出す様になったのである。この事はフタを透明にしてもみられるので、出生直後のサルは、手と同側に到達運動を行う性向のある事が解る。また、この課題の成績は遅延反応の成績と平行して良くなり、どちらもGABA阻害剤の46野局所注入の効果がみられるので、この課題と遅延反応は同じ脳内メカニズムで実現されている事が解った。購入したオシロスコ-プは行動観察に用いた。
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