研究概要 |
ドーパミン(DA)入力を欠如した(DA-deplete)線条体に増量するDAニューロン特異栄養因子を同定し、その特性を明らかにすることを目的とした。 1.移植実験:DA-deplete線条体に移植された胎仔ラット黒質DAニューロンは、正常線条体内に移植されたものに比べ、チロシン(TH)免疫組織化学活性が1.3倍、突起伸展範囲が1.3〜1.8倍大きいことがわかった。 2.培養実験:DA-deplete線条体組織抽出液(extract)の生理作用について調べた。脳幹DAニューロンの生存及び突起伸展に対する作用は、1.5〜4万の分子量分画のものが最も強く、その作用はアストログリアの非存在下でも認められた。また同分画はPC12細胞の突起伸展を高めた。これらの作用は抗NGF及び抗FGF抗体で約50%減弱した。PC12細胞ては、extractを加えると、long-lastingなCa電流が増大することがパッチクランプ法で明らかになった。 3.抗体の作製:DA-deplele線条体で増量するタンパクスポットを二次元電気泳動で展開・抽出し抗体の作製を試みたが、抗体価の高いものがまだえられていない。 4.遺伝子解析:DA-deplete線条体のcDNAライブラリーを作製した。正常及びDA-deplete線条体のmRNAよりえたcDNAプローブでディファレンシァルハイブリダィゼーションを行ってDA-deplete線条体内でmRNAの発現が増加しているプラーク(54個)を同定した。サザンブロット及びin situ hybridizationでmRNA発現増強を再確認した6個のプラークの塩基配列を調べた。その結果、3種類の既知物質(cyto chrome oxidase,α-globin,ribosomal protein)と3種類の未知物質をえた。現在、前者の生理作用及び後者の全シークエンスを解析している。 以上、DA-deplete線条体に増量するDAニューロン栄養因子候補物質をえることができた。今後これらの精製とその特性の解析を行いたい。
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