我々は既に、非選択的ベ-タ受容体刺激でほぼ同程度にIkとIca・_Lが増強するのに、選択的ベ-タ1受容体刺激ではIkは極めて僅かしか増強しないことを明らかにしてきた。そのような現象が、ベ-タ2受容体の存在しないモルモット心室筋細胞でみられることから、受容体以降の情報伝達機構に差異があることが推測される。そこで、フォルスコリンに(FK)よって非特異的にアデニル酸シクラ-ゼ(ADC)を活性化して細胞内cAMPを増加するとIkとIca・_Lはどのように変化するかを、モルモット単離心室筋細胞にパッチクランプ法を適用して検討した。まず、FKのADC結合部位を明らかにするために、4級アンモニウム塩(完全電離型)FKを用いて検討した結果、選択的に細胞内に投与したときにのみその作用を現わし、細胞外投与では作用が無いことから、その結合部位は細胞膜内側に存在することが明らかになった。次に、FKによって非特異的にADCを活性化すると、イソプロテレノ-ルではIkとIca・_Lの閾値濃度が全く同一であるにもかかわらず、FKではIkの閾値濃度がIca・_Lのそれより3倍低いことが明らかになった。これは選択的にベ-タ1受容体を刺激したときに見られる反応と逆の反応で、このことから、前述の差異の要因はベ-タ受容体からADCの間の情報伝達機構に差異のあることが示唆された。即ち、ADCを介さない受容体からカルシウムイオンチャンネルへの制御機構が存在すると考えられる。 また、細胞内カルシウムイオン濃度変化による遅延整流カリウム電流の修飾・制御機構を明らかにすべく、モルモット心室筋細胞を用いて細胞内カルシウムイオン濃度を顕微蛍光測光する実験を開始しているが、単一細胞の蛍光強度が充分でないことや部位による差が大きいためにS/Nが悪く、目下その解消に努力している。
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