研究概要 |
交感神経α_1受容体を介する心機能調節の情報伝達機構は,受容体サブタイプの存在と,それぞれのサブタイプに特有の異なったシグナル伝達過程の存在によってますます複雑化されている。α_<1B>サブタイプはイノシトールリン脂質(PI)代謝促進に共役されており,PI代謝促進の調節意義が心筋細胞においても重要な課題となっている。 心筋細胞におけるPI代謝促進は,α_1受容体刺激のみならずエンドセリン(ET)およびアンジオテンシン(AT)受容体刺激によっても起こる。本研究ではα_1,ETおよびAT受容体刺激による心筋収縮性調節の類似性の有無を詳細に検討した。その結果,以下の点でこれら三つのクラスの受容体刺激効果は著しい類似性を示した。(1)陽性変力作用は単収縮持続時間の延長をともなって惹起された。(2)陽性変力効果とPI代謝促進効果は,時間および濃度依存性においてよい相関関係を示した。(3)Cカイネース活性化作用をもつphorbol 12,13-dibutyrate(PDBu)はこれらの受容体刺激を介する効果を選択的に(β受容体刺激を介する陽性変力作用に影響を与えない濃度)遮断した。これらの実験結果は,このクラスの受容体刺激を介する情報伝達に,PI代謝促進が重要な役割りを演じていることを強く示唆する。 最近α_<1C>サブタイプがヒト心臓にも存在することが証明されたが,このサブタイプの調節における意義はまったく判っていない。ウサギ心室筋細胞においてはα_<1B>サブタイプが約60%を占める。本研究の実験結果はα_<1A>サブタイプにPI代謝促進に共役したWB4101感受性受容体と,PI代謝には共役していない(+)-niguldipine感受性受容体の,さらなる二つのタイプが存在することを示唆している。Denopamineや低濃度のHV723は後者のタイプを選択的に遮断することが明らかにされた。これらの結果はすべて裏面記載の研究発表論文として英文で公表された。
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