研究概要 |
分泌,特に開口分泌を行っている細胞の分子レベルでの解明をめざして,これ迄主として副腎髄質のクロマフイン細胞で,Ca^<2+>存在下にアクチンを切断する74KD蛋白質を分離精製してきたが本年度はこの蛋白質のドメイン構造を酵素切断して,部分的アミノ酸配列をきめた。さらに分画を精製し,それぞれの性質をきめた。一方,フオスフオリピッド(PIPz,フオスフアチジルセリン)との結合についても詳しく検討し,アクチン,Ca^<2+>との結合部との関連を明らかにしてきた。この研究を進める過程で単にアクチン系のみが分泌に関係しているのではなく,ミオシン系も関係するのではないかという仮定のもとに新らしい実験系を確立した。 ひとつはミオシン軽鎖キナ-ゼに特異的な抑制薬を採していたところ25年前に抗アレルギ-剤として開発され,のちに毒性の為とりさげられたWartmanninという試薬が,Aーキナ-ゼ,Cーキナ-ゼ,Gーキナ-ゼ,CaーCMーキナ-ゼIIには作用なくミオシン軽鎖キナ-ゼに特異的に作用することを見出し,この特異性が平滑筋のみならず非筋細胞ミオシン軽鎖リン酸化を抑制する可能性を考え,種々の細胞の機能を抑える可能性を検討した。先ず巨大細胞様RBLでIgE受容器刺戟によるヒスタミン放出をIC50が100nMで抑えることを確認した。この時Ca^<2+>-上昇は抑えていないことから,IgEレセプタ-に関連したミオシン・アクチン相互作用が関与していることが考えられる。現在,血小板からのセロトニン,ATD放出,耳下漿失液性細胞からのアミラ-ゼ放出,胃壁細胞からの酸分泌,クロマフイン細胞からのカテコ-ルアミン分泌をWartwanninが抑えることをみた。一方非筋細胞ミオシンを特異的に認識する抗体を作製,上記細胞で細胞膜直下にミオシンが存在することを明らかにし,分泌の分子機構にアクチン・ミオシン相互作用の重要性を示した。
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