研究概要 |
従来ドパミンの前駆体に過ぎないとされてきたド-パの、伝達物質様遊離の有無並びに同遊離とニコチンによる自発運動との関連について、脳微量透析法及びHPLCーECDを用いて検討した。1.(1)内因性ド-パは生体位線条体において自発的に遊離されており、ド-パとドパミンの遊離比は1:1ー2であった。αーメチルパラタイロシン(αーMPT)200mg/kgはド-パ遊離を著明に抑制、ド-パ脱炭酸酵素阻害薬N5Dー1015,100mg/kgは同遊離を著明に増大,ド-パ脱炭酸酵素はド-パをドパミンに変換した。(2)このド-パの遊離はCa^<2+>依存性,テトロドトキシン(TTX,1μM)感受性を示し、これはドパミンの結果と一致した。(3)さらにK^+50mM,40分間刺激はド-パ,ドパミン遊離をCa^<2+>依存性に誘発した。これらの事実は内因性ド-パが神経伝達物質様の過程を経て生理的に遊離されていることを示しており,ド-パが神経伝達物質であるとの仮説を支持する。 2.(1)1.と同様の系において、ニコチン10ー300μM局所還流は内因性ド-パを用量依存性に誘発し,200μMによる遊離はCa^<2+>依存性,TTX(100nM)感受性,立体特異性,メカミラミン(500μM)感受性を示し,この結果はドパミンによる結果に一致した。さらに重要な知見として,ド-パの自発性遊離がメカミラミン感受性を示すこと,すなわちニコチン性アセチルコリン受容体を介して緊張性に遊離されていることを見い出した。一方,ニコチン0.1ー1.0mg/kgは用量依存性に自発運動を増大し,0.4mg/kgによる作用は立体特異性,メカミラミン(1.0mg/kg)感受性を示した。線条体の脳微量透析において,ドパミンを減少させずにド-パのみを選択的に減少させる用量のαーMPT3mg/kg前処置は0.4mg/kgによる作用を部分的に抑制した。この事実は、ニコチンによる自発運動増大には、その一部に内因性ド-パの遊離が関与していることを示している。
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