研究概要 |
従来ドパミンの前駆物質に過ぎないとされてきたドーパのラット自発運動に対する作用を、脳微量透析法並びに自発運動量測定装置を用い、ドーパ、ドパミン遊離を自発運動と同期してモニターする系を確立、検討した。1.(1)L-ドーパ 100 mg/kg,i.p.は、ドーパ脱炭酸酵素阻害薬、NSD-1015,100mg/Kg,i.p.前処置下においてラット自発運動を著明に増大した。 ドーパ遊離はL-ドーパ投与1時間後にピークに達しその後徐々に減少した。自発運動はドーパ遊離のピークより増大しはじめ、投与3時間後にピークに達し以後回復に転じた。これに対しドパミン遊離は投与後1時間20以内は増大せず、100分以後徐々に増大し自発運動回復過程においても増大はさらに持続した。この結果から、ドーパ100mg/kgの作用の発現にはドーパとドパミンの共存が必要であることが示唆される。一方、より低用量のL-ドーパ30mg/kg,i.p.は自発運動に対し無作用であった。(2)D_2-作動薬クインピロール1.0mg/kg,s.c.は自発運動を増大した。無作用濃度のドーパ30mg/kg,の同時投与はドーパ脱炭酸酵素阻害下にクインピロール0.1-1.0mg/kgの作用を3ないし5倍程度にまで増強した。クインピロール1.0mg/kgに対するドーパ30mg/kgの増強作用は立体特異性でありまたドパミンの自発性遊離の増大を伴うことなく生じた。この結果はすなわち、ドーパが、ドパミンへの変換を介さずにドーパそれ自体がドーパの特異的受容部位を介してD_2受容体応答に対するポテンシエーターとして作用することを示している。この増強作用はおそらくシナプス後性に生じると推察され、従来説明不能であったパーキンソン病治療に際して一般に見られるドーパとD_2-作動薬併用時の、増強効果の機序を十分説明するにたる新たな知見と考えられる。
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