研究概要 |
尿細管のCa^<2+>再吸収は体液のCa^<2+>バランスの調節に重要な役割りを果している。近位側ネフロンでは必要最小限の一定量のCa^<2+>を再吸収するにに対して、遠位側ネフロンではCa^<2+>バランスの変化に応じたホルモンによる微妙な輸送制御が行なわれている。本研究では遠位側ネフロンのCa^<2+>輸送機序とそのホルモン、薬物による制御機構を単離尿細管灌流法を用いて検討した。方法としてはCa^<2+>フラックス、fura2による細胞内Ca^<2+>(Ca^<2+> _i)の測定、電気生理学的手法、細胞容積の画像解析など多岐にわたった。まず、PTHとカルシトニンは夫々接合尿細管(CNT),遠位曲尿細管(DCT)に作用してCa^<2+>輸送を促進することを明かにした。これの作用には基低則のNa^+/Ca^<2+>交換系が必要である。PTHはCNTの管腔側の非選択性カチオンチャネルを開くことによってCa^<2+>の流入を促進する。この時、同時にNaも流入するので基低側のNa^+/Ca^<2+>交換系を介する汲み出しの効率が落ちるが、Ca^<2+>によりamiloride感受性のNaチャネルが抑制され効率を回復させる方向に働く。このようなNaによるCa^<2+>輸送の制御機構によってamiloride,thiazidesなどの利尿薬によりCa^<2+>再吸収機構も説明できることが明かになった。すなわちamilorideによるNaチャネルの抑制、thiazidesによるNaCl共輸送の抑制、管腔からのNaの除去等のNa流入の減少によって、いずれもCa^<2+>再吸収が促進される。これらの作用にはあくまでもPTHの存在が必要である。このような機構はCNTのNaチャネルとKチャネルを抑制する新規利尿薬M17055についても確認された。このような遠位側ネフロンにおけるNa^+とCa^<2+>の相互作用がプロスタグランジンの尿細管作用にどのように関わっているかについて検討した。PGE_2は遠位曲尿細管(DCT),CNT,皮質部集合管(CCD)で細胞腫大を示したが、CNTで最も著明な作用がみられた。細胞の腫大には基低則からのNa^+/Ca^<2+>交換系を介するNa^+流入が関与し、Na^+,K^+ポンプの関与はないことが明かになった。PGE_2は細胞内ストアからのCa^<2+> _i増加を介して、Na^+/Ca^<2+>交換系を刺激し、Ca^<2+>チャネルを介するCa^<2+>再循環を介してNa^+の流入が促進されると考えられた。一方、PGE_2のCNTの管腔内電位V_Tに対する2相性の反応をもとに、各種阻害薬によるデータより、PGE_2は初期にはcAMPにより非選択的チオンチャネルを開口し、後期にはCa^<2+> _i増加によるamiloride感受性Naチャネルの抑制することが考えられた。
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