研究概要 |
胃壁細胞に特異的な転写調節因子の解析は、細胞の分化と細胞特異的な遺伝子発現と関連して重要な課題である。ヒトやラットの胃酸分泌酵素(H^+/K^+-ATPase)のαおよびβサブユニット遺伝子の上流に、胃特異的に結合するDNA結合蛋白質を同定し、このもののcDNAクローニングを行った。認識配列が(G/C)PuPu(G/C)NGAT(A/T)PuPyであることからGATA結合蛋白質と類似性があると推定したように、DNA結合領域が相同性のある2種の蛋白質を新たに見つけた。それらをGATst1,2と名付けたが、胃粘膜に特異的に発現しており、両者のin vivoの働きを解明することが次に重要になる。一方、ヒト胃ガン細胞由来のMKN45細胞にH_2ヒスタミン受容体mRNAが発現していることを見いだし、この細胞が壁細胞様形態を示すこととよくあっており、今後この細胞を用いる価値のあることが判明した。実際、この細胞には、GATAst1が発現していることを確認することができた。この他、H_2ヒスタミン受容体遺伝子のクローニングに成功し、その発現様式の検討を行えるようになっている。また、Cl^-チャンネルのクローニングにも着手し、対照となる筋肉型のものの特性を検討できるシステムを導入することができた。さらに、無酸症患者の血清を解析するために、H^+/K^+-ATPaseαサブユニットのcDNAを用いて部分配列を大腸菌に発現させた。各種部分配列に対する血清の反応性を調べると異なっており、疾病の原因や進行との関連を知る上で有用な実験系を確立できた。また、ブタの胃粘膜より調製した膜小胞をELISAに供することで、血清のスクリーニングにも利用できることを示した。このように、研究期間内に多くの新しい知見が得られ、さらに国際的に見ても独創性のある研究として将来的にも期待の大きい研究テーマに発展してきている。
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