研究概要 |
カルパインは不活性な前駆体で,自己触媒的に活性型に変化する。この際非生理的に高濃度のカルシウムが必要なので,生体内でカルパインが活性型に変化する機構を研究した。リン脂貭,特にイノシト-ルリン脂貭ジリン酸(PIP_2)の存在下では生理的カルシウム濃度でカルパインの活性化がおきることを明らかにした。また,PIP_2と特異的に作用するネオマイシンがカルパインの活性化を特異的におさえるので,生体内のカルパインの活性化にもPIP_2が関与することが判明した。血小板をカルシウムイオノホアで刺激した際におこるカルパインの活性化では,1分以内にカルパイン前駆体が完全に消失し,それに対応して活性型カルパインが出現したが,これも数分で消失した。免疫電子顕微鏡では血小板刺激でカルパイン前駆体が細胞貭から細胞膜に移り,活性型カルパインは細胞膜の内側,または生体膜の細胞貭側に存在した。 一方,プロテインキナ-ゼC(PKC)のcDNAの発現系を使い,PKCのダウンレギュレ-ションをしらべた。PKCαを発現させたCOS細胞をホルボ-ルエステルで刺激すると,PKCは細胞貭から細胞膜に移って活性化され,次にダウンレギュレ-ションされた。PKCの活性中心のKをRに変換した活性のないPKCのcDNAを発現させると,細胞貭から細胞膜への転移はみられたが,ダウンレギュレ-ションはしなかった。これは不活性なPKCでは膜へ移行したときに自己リン酸化がおこらないためで,カルパインはリン酸化された,すなわち活性型のPKCのみを特異的に識別して分解することが判明した。また,GH_4Cl細胞をTRHで刺激すると,この細胞に含まれる3種のPKCの,β,εのうちεだけがダウンレギュレ-ションされ,αは膜へは移ったがダウンレギュレ-ションされなかった。PKC分子種のダウンレギュレ-ションにはリン酸化が必要であることがわかった。
|