細胞の分化と癌化におけるポリ(ADPーリボース)の役割に関する研究

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03454159
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 上田 國寛 京都大学, 医学部, 助教授 (00027070)
• キーワード: ポリ(ADPーリボース) / (酵素)阻害剤 / ADPーリボシルトランスフェラーゼ / (酵素)促進剤 / 細胞分化 / テラトカルシノーマ / ベスナリノン / ブルーム症候群

研究概要

1.ポリおよびモノ(ADPーリボシル)化の特異的阻害剤の発見と解析ーー前年度にひきつづき、種々の有機化合物についてポリ(ADPーリボース)シンテターゼの阻害剤をサーベイし、新たに多数の阻害剤を発見した。これらの大部分は複素環化合物で、イソキノリン、ベンゾピロン(クマリンやクロモン)、ピリドインドール(カルボリン)誘導体などーCOーあるいはーCNーを組み込んだ構造のものであった。またその一部(特にノボビオシン)はアルギニン特異的モノ(ADPーリボシル)トランスフェラーゼに特異的な阻害を与えることを見出した。
2.ポリ(ADPーリボシル)化の促進剤の発見ーーポリ(ADPーリボース)シンテターゼの活性が従来知られたDNA、ヒストン、ポリアミン、マグネシウムイオンの他に、カルシウムイオン、エタノールやメタノールなどの有機溶媒、硫酸イオンやリン酸イオンなどの多価アニオン、1,10ーフェナンスロリン、2,2′ージピリジルなどのキレーター(Mg_〓存在下)、Trp-P-2やハルマリンなどのカルボリン化合物よっても一定条件下で著明に促進されることを見出した。
3.ベスナリノンのポリ(ADPーリボース)シンテターゼ阻害作用と細胞分化誘導作用の発見ーー市販強心薬ベスナリノンとその誘導体にかなり強いポリ(ADPーリボース)シンテターゼ阻害作用を見出した。またこれらが上記EC細胞を神経細胞様および神経膠細胞様細胞に分化誘導することを見出した。
4.ブルーム症候群の細胞におけるポリ(ADPーリボース)シンテターゼ活性の解析ーー好発癌性遺伝病であるブルーム症候群の患者から分離、株化されたリンパ球について、ポリ(ADPーリボース)シンテターゼ活性を調査し、その幾つか(特に低SCE型のもの)が異常に低い活性をもつことを見出した。

研究成果

• [文献書誌] Ikai,K.: "Poly(adenosine diphosphate-ribose)synthetase in formed mouse opidermal cells in culture." Acta Histochem. Cytochem.24. 251-255 (1991)
• [文献書誌] 上田 國寛: "ポリ(ADPーリボース)代謝酵素系と生物学的機能" ビタミン. 65. 213-226 (1991)
• [文献書誌] Banasik,M.: "Specific inhibitors of poly (ADPーribose)synthetase and mono(ADPーribosyl)transferase." J.Biol.Chem.267. 1569-1575 (1992)
• [文献書誌] Banasik,M.: "Inhibition of poly(ADP-ribose)synthetase activity by dimethyl sulfoxide." J.Enz.Inhib.
• [文献書誌] Miyahara,T.: "Hyperthermic enhancement of cytotoxicity and increased uptake of as-diaminedichloroplatinum(2)into cultured human esphageal cancer cells." Jap.J.Cancer Res.
• [文献書誌] Ikemoto,M.: "Development of an efficient ELISA system for human liver arginase and its clinical applications" Clin.Chem.
• [文献書誌] Kido,T.: "ADP-Ribosylation Reactions" Springer-Verlag, 410 (1992)
• [文献書誌] Ueda,K.: "Recent Advances in Cellular and Molecular Biology,Vol.6" Peeters Press, 320 (1992)