生後2週齢期のラット前脳基底野コリン作動性神経細胞に対するBDNFの生存維持作用について初代培養系を用いて検討した。また、生後8週齢のラットを用い前脳基底野コリン作動性ニューロンをNGF/BDNF存在および非存在下に培養することに成功した。成熟ラット脳からのの培養法は既報に従って行っているが、一部変更し工夫している。細断した組織をパパイン消化の後、細胞の破片を血清密度を変える遠心法で注意深く除き、生細胞を1ウエルに0.5ラット分として48-well plate(培養面積1cm^2のコースター社製または0.65cm^2の住友ベークライト社製、共にあらかじめアストログリア細胞で被膜している)に、まいた。培地は、1μMのcytosine arabinosideを含み、NGF(100ng/ml)存在および非存在下で5日間培養した。培養下のAChE染色による陽性細胞を数えると、NGFの生存維持効果は以前に報告した生後2週齢ラットからの培養前脳基底野コリン作動性ニューロンに対する生存維持作用に比べ低下していた。しかし、その効果は依然認められ、十分な神経繊維の再生を観察した。生後5週齢前後のラットからの培養でも、ほぼ同様の結果を得ている。これらの結果は、以前報告した我々の結果と合わせ考えると、培養下でNGF応答性でみたラット前脳基底野コリン作動性ニューロンの性質は、シナプス形成開始期(E16〜P3)ではChAT活性促進にみられる分化時期を経た後、シナプス形成終了期(P10〜P15)ではニューロンの生存維持が最も強く図られ、その後、NGFによる生存維持効果は低いレベルになるものと思われる。
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