研究概要 |
インスリンは代謝調節、細胞増殖因子として生体必須ホルモンであり、それは細胞膜に存在するインスリンレセプターと結合することにより作用を発現する。インスリンがレセプターと結合することにより、そのシグナルがどのようにして細胞内に伝達され、最終的なターゲットに到達するか、またその病態によってどのような異常が生じるかを解析することは、医学・生物学上極めて重要な課題である。インスリンレセプターチロシンキナーゼを介するシグナル伝達機構を明らかにすることを目的とする。 細胞をインスリン刺激した後、Cell Lysateを抗ホスホチロシンで反応させた沈降物中にPI3-キナーゼ活性が上昇していることが1990年2つの研究室より報告され、PI3-キナーゼがインスリンシグナル伝達のメディエーターの1つになっているのではないかと推測された。 我々はインスリンレセプターチロシンキナーゼによりin vitroはおよびin vivoでPI3-キナーゼの85kサブユニットがチロシンリン酸化されることを報告した。そして368,580,607番目のチロシン残基がリン酸化されることを明らかにした。今後この3つのTyrをPheに変えたp85を大量に細胞内で発現させることにより、インスリンシグナル伝達のどこがblockされるかを検討し、PI3-キナーゼの役割を明らかにする。 また、インスリンレセプター遺伝子異常が、インスリン非依存性(成人型)糖尿病の遺伝因子の一つとして考えられるとの立場から、この型の糠尿病患者の中にどれほどの頻度でその異常が存在するのかを検索しており、既に4例のアミノ酸置換を発見している。
|