研究概要 |
牛胸腺細胞質分画より2種類のPI-3kinaseを8ステップの精製過程にてそれぞれ単一標品として精製した。これらの精製ステップにより、PI3KIおよびPI-3KIIは、DEAE-セルロースの溶出分画を基準にした場合、それぞれ6,250倍、1,250倍に濃縮され、回収率は1.7%と8.6%であった。 精製したPI3KIおよびPI3KIIは、ゲルろ過により分子量がそれぞれ、110kDaおよび190kDa、PI3KIIのSDS-PAGEでは110kDaおよび85kDaの2量体であることが判明した。また、S.aureusV8proteaseを用いたペプチドマッピングではPI3KIとPI3KIIの85kDa蛋白が同一パターンを示した。これはPI3KIが110kDaのモノマー、PI3KIIがPI3KIと85kDa蛋白の結合したヘテロダイマーであり、更に、PI3KIの比活性(250nmol/min/mg)はPI3KIIの比活性(50nmol/min/mg)に比べ5倍高いことを考え合わせると、活性基は110kDa蛋白に存在し、85kDa蛋白はこの110kDa蛋白に結合することによりPI-3kinase活性を調節(抑制)する調節蛋白であることが示唆される。 次に精製したPI-3kinaseとpp60^<v-src>との結合を調べるため、src/3Y1、src/CEF、pp60^<v-src>(src/3Y1、src/CEF)との結合は、PI3KIではなくPI-3KIIを加えた時にのみ認められた。同様にpolyomamT/3Y1より免疫沈降で得たmT/pp60^<c-src>複合体にもPI-3KIIが結合した。外来性に加えたPI-3KIIはpp60^<c-src>ではなくpp60^<v-src>によりチロシン残基がリン酸化され、しかもこのチロシンリン酸化は85kサブユニットに認められた。またinvivoにおいてもpp60^<v-src>がPI-3kinaseと直接結合していることが判明した。
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