単クローン抗体応用による腎障害機序の分子レベルにおける解析

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03454168
• 研究機関: 新潟大学
• 研究代表者: 清水 不二雄 新潟大学, 医学部, 教授 (40012728)
• 研究分担者: 追手 巍 新潟大学, 医学部, 助教授 (60018744)
• キーワード: 単クローン抗体 / 蛋白尿 / 腎糸球体硬化 / 慢性化機序

研究概要

1.腎糸球体可溶化による単クローン抗体(mAb)認識抗原同定と性状検索:対応抗原が大変微量であることから、再度出発材料の大量蓄積が必要となった。別にBolton-Hunter法により、I^^<125>を単離糸球体のレベルで標識し、以後の可溶化条件、Affinity-gelへの結合率、溶出条件とその効率の検索という根本的な検討の必要性を痛感し、標識に着出している。今後はgene cloningの併用も計画されている。 2.単離糸球体レベルにおけるmAb認識抗原の動態、並びにin vivo,in vitroにおけるmAb反応後の変化に関する検索:mAb5-1-6のFabでは蛋白尿は惹起されず、F(ab')_2では惹起された。糸球体上皮細胞表面上での抗原のcross-linkingとその後のendocytosisが蛋白尿惹起には必要な過程のようである。この抗原の動態には細胞骨格が関与するものと思われる。受身Heymann腎炎でその動きを抑制したchlor-promazineは、mAb5-1-6腎病変には影響を与えなかった。in vitroの検索では、この動きはNaN_3(10^<-1>M,10^<-2>M)により阻止されたが、cytochalasin B (100μg/ml)やCa-ionophore A-23187(0.05〜0.1μg)では阻止されなかった。今後はこの一連の動きに関与する諸因子はもとより、細胞表面での反応とその後の情報伝達系の詳細を明らかにしていくことを計画中である。 3.新しいmAb作製と反復、並びに複数投与による新しい病変モデル作製への試み:mAb1-22-3を2週間隔でもう一度投与することのみで、待ち望まれていた進行性、不可逆性硬化性病変モデルの開発に成功した。1回投与による可逆性モデルと、種々のパラミターについて比較検討することにより、慢性化を規定する因子解明への道を開くことができた。

研究成果

• [文献書誌] Okasora,T.・・・: "Suppressive effect of superoxide dismutase on Adriamycin nephropathy." Nephron. 60. 199-203 (1992)
• [文献書誌] Kawachi,H.・・・: "Quantitative studies of monoclonal antibody 5-1-6-induced proteinuric state in rats." Clin.exp.Immunol.87. 215-219 (1992)
• [文献書誌] 清水 不二雄: "単クローン抗体応用による腎障害機序の解析" 病態生理. 11. 53-55 (1992)
• [文献書誌] Kawachi,H.・・・: "Epitope specific induction of mesangial lesions with proteinuria by a monoclonal antibody against mesangial cell surface antigen." Clin,exp.Immunol.(in press).
• [文献書誌] Kawachi,H.・: "Mesangial slerotic change with persistent protei-nuria in rats after two consecutive injections of monoclonal antibody 1-223" Clin.exp.Immunol.90. 129-134 (1992)
• [文献書誌] Kagami,S.・・・: "A monoclonal antibody(IG10) recognizes a novel human mesangial antigen" Kidney Int.42. 700-709 (1992)
• [文献書誌] 清水 不二雄: "馬杉腎炎は本当に抗糸球体基底膜抗体により惹起されるか" 治療学. 26. 82- (1992)
• [文献書誌] 清水 不二雄: "モノクローナル抗体法を用いた腎炎の解析" 腎と透析. 33. 413-418 (1992)
• [文献書誌] 清水 不二雄: "蛋白尿惹起性モノクローナル抗体" 総合臨床. 41. 2697-2702 (1992)
• [文献書誌] 清水 不二雄: "疾患とPAF 3.腎疾患" 治療学. 26. 1221-1223 (1992)
• [文献書誌] Sato,T.・・・: "Nephrotoxic serum nephritis in nude rats:the roles of host immune reactions inthe accelerated type" Clin,exp.Immunol. 91. 131-134 (1993)
• [文献書誌] Takashima,N.・・・: "Effect of chlorpromazine on kinetics of injected monoclonal antibody in MoAb-induced glomerular injury" Clin,exp.Immunol. 91. 135-140 (1993)
• [文献書誌] 清水 不二雄: "糸球体障害の免疫学的機序" 臨床科学. 29. 131-137 (1993)
• [文献書誌] Kawachi,H.・: "Quantitative study of mesangial injury with proteinuria induced by monoclonal antibody 1-22-3" Clin,exp.Immunol. 92. (1993)
• [文献書誌] 清水 不二雄(分担執筆): "腎臓病 Key Notes" 東京医学社, 353 (1992)
• [文献書誌] 清水 不二雄(分担執筆): "Annual Review 腎臓" 中外医学社, 249