研究概要 |
腎障害機序を分子レベル・エピトープレベルで解析する上に、我々が作製した蛋白尿惹起単クローン抗体(mAb)5-1-6、並びに1-22-3は非常に有益な武器である。両mAbは大変微量(各々注射量として125μg,25μg両腎結合量として12.8μg,1.8μg)にて腎病変を惹起することが明かとなった。これは従来の実験腎炎における病変惹起必要最低量に比較して桁違いに微量であり、余分の免疫反応が除外され得るmAbならこその値であり、かついかに限定された重要部位との反応が引き金をひくことになるかを示すものである。対応抗原同定と性状検索には難渋しているが、単離糸球体レベルにおける ^<125>Iの標識による、可溶化条件、Affinity gelへの結合率、溶出条件とその効率の検討という基本的で体系だったアプローチと、gene cloningとの併用による目的達成が意図されている。Fab,F(ab)_2による検討から5-1-6による蛋白尿惹起には、糸球体上皮細胞表面上での抗原のcrosslinkingとその後のendocytosisが必要のようである。単離糸球体を用いて、この現象に及ぼす種々の薬剤(NaN_3、cytochalasin B,Caionophore等)の影響が検討された。energy依存性であることは明らかにされたが詳細は情報伝達機序の詳細と共に今後更に検討される予定である。mAb1-22-3の1回投与により蛋白尿とともに炎症細胞浸潤、messangiolysisに始まる細胞と基質の増加という一連の著明な形態学的変化をも一過性に惹起し得る。1-22-3を2週後にもう一度投与することのみで、待望の進行性、不可逆性硬化性病変モデルの開発に成功した。可逆性モデルと種々のパラメーターに関して比較検討することにより、慢性化を規定する因子解明への道を開くことができた。
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