研究概要 |
1.本邦の卵巣癌56例の組織について遺伝子増幅を検索したが、cーmyc遺伝子の2倍増幅を1例に認めただけで、Kーras,erbーB2など卵巣癌において報告のある癌遺伝子を含めて、遺伝子増幅はみられなかった。また、cーmyc遺伝子の発現は卵巣癌の中で漿液性腺癌に高い傾向がみられ、FIGO分類のIII期に最も高く、IV期では有意に減少した。以上から、本邦における卵巣癌では遺伝子増幅のみられる頻度は低く、cーmyc遺伝子の発現は発癌過程で一過性に、発癌にとって必要な時期に亢進することが示唆された。 2.ヒト肺大細胞癌由来でcーmyc,Kーras遺伝子同時増幅を有する細胞株であるLu65とKHC287において染色体のinーsituハイブリダイゼ-ションを行ったところ、Lu65においては染色体12q+に両者の増幅単位がみられた。KHC287ではcーmycが2染色体、Kーrasが3染色体上にみられ、うち、ひとつずづは同一染色体上に位置した。現在これらの染色体を同定中である。両遺伝子の機能的関係をみるために、KHC287にアンチセンスcーmycの発現するベクタ-を導入したが、Kーrasの増幅があるにも拘らず、通常のノ-ザンハイブリダイゼ-ションはメッセ-ジが捉えられないため、RTーPCRによってKーrasの発現を検討している。 3.食道癌細胞株において未知の遺伝子増幅を認めた例について、増幅遺伝子をクロ-ニングするため、オリジナルのInーgel DNA renaturationを行ったところ、遺伝子増幅陰性の細胞株にまで増幅遺伝子由来と考えられるバンドを認めたため、確認したところ、マイコプラズマの感染であった。このため、現在汚染を除去中であり、当初の計画から遅れが生じている。また、食道癌の組織が感染率が高く、プラスミドを保有した細菌の感染は組織における遺伝子増幅の検索に支障を来している。
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