研究概要 |
ウサギ腹腔にカゼインで起した炎症の場の24時間目の滲出細胞を出発材料として、ILー1抑制因子を精製し,その構造を決定することに成功した。この因子はゲル濾過上13kD,等電点分画上pI5.5の因子で,ILー1に対する結合能,分解活性を認めず,ILー1のレセプタ-への結合を阻害する物質であった。また,現在知られているI型,II型いづれのレセプタ-に対しても,同程度にILー1の結合を阻害した。 構造決定の途上N端はブロックされていたので、リシルエンドペプチダ-ゼ処理フラグメントを逆相クロマトにより精製し,4種のフラグメントについて,その部分ペプチド構造を決定し,この構造を参考に2種のオリゴDNAプライマ-を作成し,炎症24時間滲出細胞から作成したcDNAを鋳型にPCR法によりプロ-ブを作成,これを用いて,この抑制因子をコ-ドしていると考えられるクロ-ンを選択,そのうち最長のインサ-トをもつものについて,その構造を決定した。さらに、N端の構造については,リシルエンドペプチダ-ゼフラグメントのうち,そのN端がブロックされているものについて,アミノ酸分析を実施,上述のcDNAの構造と比較 して決定した。また,N端を修飾している分子については,このフラグメントのマス・スペクトロメトリ-によって得られる値と,cDNA構造から得られる分子量との差からアセチル基を同定した。 以上の結果から,この抑制因子はアミノ酸177ヶの前駆体として合成され,そのN端34ヶのアミノ酸が切断され,143ヶのアミノ酸から成る活性型抑制因子として細胞外に分泌される因子であることを初めて明らかにすることができた。なを、この因子を既知の物質と比較すると,分子の性格,作用にさまざまなちがいがあるものの,ヒトILー1receptor antagonigtと相同のウサギ因子であると考えられた。
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