研究概要 |
腸管寄生虫の排除機構にヘルパーT細胞が関与していることが知られている。本研究ではこれに由来するサイトカインとしてIL-5に着目し、ネズミに寄生する糞線虫2種(ネズミ糞線虫S.r.,ベネゼラ糞線虫S.v.)と旋毛虫(T.s.)の感染モデルにおいて果たす役割を追求した。その結果、次のような知見を得た。 1)S.r.、S.v.、T.s.感染マウスにおける末梢血好酸球の増加にはIL-5が大きな役割を果たしている。 2)S.v.初感染マウスにおいては抗IL-5モノクローナル抗体(NC17)を少なくとも感染3日前に投与すると小腸での寄生数が対照に比べ増加した。しかしこのプロセスに好酸球は関与していなかった。 3)S.v.初感染マウスでは移行期幼虫に対する自然抵抗性や排虫機構にはIL-5は関与しないことが示唆された。 4)S.v.再感染防御機構において、移行期幼虫に対するものはIL-5依存性であり、これにはIL-5レセプターを保有する細胞が関与していた。他方、腸管においてはIL-5非依存性であった。 5)先にS.r.に感染させたマウスは同属異種のS.v.に対する交叉抵抗性を獲得していた。この交叉抵抗性は小腸において発現されるもので、移行期幼虫には作動しなかった。更にこの交叉抵抗性の発現は抗IL-5MAb(NC17)によって部分的に阻害された。 6)T.s.感染マウスにおいてはリコンビナントIL-5により新生幼虫に対する防御系は形成されなかった。更にこのモデルではNC17投与は初感染および再感染防御機構に影響を与え得なかった。 以上、4実験系において感染防御に果たすIL-5の役割を検討した。その結果、感染した幼虫の種によりIL-5は防御機構に関与したり、しなかったりしていることが判明した。これらの知見は寄生虫の宿主適応の過程で宿主動物の防御システムをくぐり抜けるメカニズムを獲得した事実を反映しているように思える。
|