初年度の研究計画に沿った実験の結果、次のようなな成果をえた。 1.抗体・補体による構造変化に関する研究。 この実験は、抗体により莢膜が膨化するという、古典的な観察結果を電子顕微鏡で解析するものである。光学顕微鏡での観察どおり、抗体の処理により、莢膜は幅で約3倍程に膨化することが確認された。しかし、抗体以外でも、緩衝液による洗浄によっても膨化することも明らかになった。抗体処理菌の観察には、常に余剰の抗体を除去するための洗浄の操作が入るので、抗体による膨化は、洗浄の為とも考えられる。この可能性を除外するため、抗体処理後、洗浄を行わないで観察することを試みたが、余剰の抗体が視野を汚くして、莢膜構造を充分に観察できなかった。これは、抗体が菌体から遊離した莢膜抗原と反応し菌体に多数付着するためと考えられる。そこで、血清よりグロブリン分画をとりこれをペプシン処理しFabとして凝集性を無くした抗体を用いて観察を行った。その結果、抗体で明らかに莢膜が膨化することが示された。何故膨化するかに付いては更に詳細な観察が必要である。 2.プラスミドの分離の試み 肺炎桿菌の莢膜がある弱毒株には大型のプラスミドがあることが分かっている。このプラスミドの除去をおこない、病原性の変化との関連を調べることを試みたが、除去出来なかった。試みた方法は、高温での培養、アクリジオオオレンジ処理、エチジウムブロマイド処理である。
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