研究概要 |
本年度の研究は、莢膜と抗体との反応による形態的変化が中心である。抗体は、莢膜保有株(277株)で家兎を免疫し得た血清を、莢膜非保有株で充分に吸収して作製した。この抗体は、ゲル内沈降反応による試験では、莢膜多糖とのみ反応し外膜多糖とは反応しないことを確認してある。この抗体から免疫グロブリンを分離精製し、さらに、酵素ならびに化学処理により、IgGの各フラグメント分子を作った。Fab,Fc,ならびにHalf moleculeである。IgGで莢膜保有菌を処理すると抗体処理と同様に莢膜の膨化が観察された。免疫電顕では抗体処理後に過剰の抗体を除去するため、かならず数回の洗浄を行なうが、この操作だけでも、莢膜は膨化することが前年度の研究で明らかになったので、抗体処理による膨化なのか洗浄による膨化なのか結論がえられていない。洗浄を省略して観察すること、過剰の残存抗体と莢膜多糖の反応が視野の邪魔して充分な観察が出来ない。そこで、単価の抗体分子での反応を見ることとしてFab,half moleculeでの莢膜膨化を無洗浄で観察したその結果これらの分子でも莢膜の膨化が明らかに観察され、莢膜の膨化は、抗体との反応によってのみでも起こる現象であることが明らかにされた。
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