研究概要 |
マウスの腹腔マクロファージを用いて、細菌感染あるいは細菌内毒素(リポ多糖、LPS)や死菌を作用させた場合の細胞内部の蛋白リン酸化反応を解析し、それに伴った細胞内のシグナル伝達機構、モノカイン(特にIL-1,TNF-α)産生との関連を追求し、マクロファージ活性化の機序を明らかにしようと試みた。以下のような成果を得た。 1。Legionella pneumophila強毒株をA/Jマウス・腹腔マクロファージに感染させると弱毒株や他の菌(Pseudomonas aeruginosa,Salmonella typhimurium)の感染やLPS,phorbol esterの刺激で現れるリン酸化とは別なリン酸化蛋白(76kDa)が認められる。この蛋白リン酸化は蛋白合成阻害剤や抗生剤による菌の増殖阻止の影響を受けない。2。S.typhimuriumをマウス(C3H/He)の腹腔マクロファージに感染させると、死菌やLPSを投与した場合に現れるリン酸化蛋白とは別に、感染に特有と見られるリン酸化蛋白(85,72,33,29,23kDa)が認められる。このうち、33,29,23kDaリン酸化蛋白は感染菌に由来することが明らかにされた。3。LPSで刺激したマクロファージ細胞質内に現れる65kDaのリン酸化蛋白はtyrosine kinaseによる直接的な影響を受けないことがtyrosine kinase inhibitorsを用いての実験で明らかにされた。4。protein kinase C(PKC)やcalmodulin-dependent kinaseのinhibitorsは65kDa蛋白のリン酸化を著しく阻害した。PKC inhibitorsはTNF-αやIL-1βのmRNAの発現や産生を阻害するが、calmodulin inhibitorsはIL-1の方のみを阻害した。5。non-pyrogenic lipid A analoguesをあらかじめ作用させると、LPSを作用させても65kDa蛋白のリン酸化やモノカインの産生は認められない。
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