マイクロインジェクションとPCRをくみあわせた新しいDNA複製検出系を開発し、HCMV Towne株のHindIII A断片(map unit0.4を中心とする24kb領域)中に、主としてLytic phaseに機能するDNA複製開始点(oriLyt)が存在することを明らかにした。 次に、ori活性をもつDNA断片を漸次短くし、上記のDNA複製検出系を用いて、HCMV oriLytの最小領域を決定した。HindIII A断片中の4.3kb領域(AatII-Sac I)は24kb断片と同様の効率で複製したが、この4.3kb領域の5'-側から1.3kb、3'-側から0.9kbをそれぞれ欠失させたところ、複製効率は低下した。このことはHCMV Towne株oriLytの5'-側、3'-側境界がそれぞれこれらの領域中に含まれることを示している。 さらにHCMVのゲノムDNAの複製様式を明らかにするために、HCMV oriLytを含むプラスミドのHCMV感染細胞内複製中間体の構造を、低濃度アガロースゲルによる電気泳動とゲルから直接にPCRする方法を開発して解析した。この方法を用いて、DNA複製中間体は少なくとも240kbのHCMVゲノムより大きな分子となっていることを明らかにした。この結果はHCMV oriLytからローリングサークル型のDNA複製がおきていることを示唆している。(なお、この研究には大学院生渡辺慎哉が協力した。)
|