研究概要 |
当初予定したノーザンブロッティング法による各種ロタウイルス間の遺伝的類縁性検討の前に,各動物種由来ロタウイルス(ウシ5株,ウマ3株,イヌ2株,ネコ2株,ヒト1株)について,病原性と宿主細胞増殖性および血清型特異性を規定するとされるVP4およびVP7抗原コード遺伝子の塩基配列を決定し以下の知見を得た。 1.5株のウシロタウイルスのうち61A株(VP7血清型G10)のVP4はUK株(G6)のVP4と,A5株(G8)のVP4はNCDV株(G6)のVP4とそれぞれ高い相同性を示した。 2.A44株,B223株,KK-3株(それぞれタイ,アメリカ,日本での分離株:いずれもG10)のVP4は,これまで報告されたVP4と系統的にかけ離れており,相同性は低く(50〜60%),また4個のアミノ酸が欠失していた。 3.3株のウマロタウイルスの中で,H2株,FI-14株(G3)のVP4は互に類似しているが,L338株(G13)のVP4とは異なっていた。 4.2株のイヌロタウイルスK9株,CU-1株(G3)とネコロタウイルスCat97株(G3)のVP4では互いに相同性が高かった(95%以上)が,もう1株のネコロタウイルスCat2(G3)のVP4はこれらの株と異なり,ヒトロタウイルスK8株(G1)のVP4とのみ高い類似性を示した。 5.ヒトロタウイルスMc35株(G10)のVP4は嚴密には、動物ロタウイルスを含めて従来報告されているいずれのVP4とも異なることが示された。coding regionの塩基およびアミノ酸配列の他のウイルスとの一致率は,VP4(又はP)血清型の1つの群を代表するK8株の場合を除き,66.7-68.8%および64.9-70.8%を示した。一方,K8株とのhomologyはそれぞれ77.7%と85.8%であった。單クロン抗体との反応性をも考慮すると,Mc35株のVP4はK8-VP4群に属しその1亜型と考えられた。このように,ロタウイルスVP4は動物種特異性を示すとともに,同一種内でも複数のPタイプが存在すること,異なる種間での類似性も稀に存在することが示された。
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