研究概要 |
ILー2によるT細胞の増殖・分化機構を解明するために本研究ではT細胞上に発現するILー2受容体(ILー2R)のサブユニット構造について解析した。その結果、ILー2Rβ鎖と会合するγ鎖がILー2存在下においてのみ同定された。γ鎖の機能を調べるためにヒトT細胞株(MOLT4)にβ鎖遺伝子を導入し、β鎖発現MOLTβ細胞クロンを樹立した。さらにMOLTβ由来のサブクロン(MOLTβ11,MOLTβ12)2株を得、それらが発現する中親和性ILー2結合サイト数をScatchard plotによって算出した。同時にβ鎖と共沈するγ鎖を定量したところ、ILー2結合サイト数とγ鎖量とが良く相関することが分っ た。β鎖遺伝子を非リンパ球系細胞株(HeLa,COS7)に導入しても、β鎖発現細胞クロンは得られるが、ILー2結合能はいずれの細胞クロンにおいても認められなかった。さらにこれらHeLaβ,COSβにα鎖遺伝子を導入すると弱い高親和性ILー2結合能が認められた。しかし、これら細胞株においてもγ鎖は検出されなかった。以上の結果から、本研究で同定されたγ鎖はβ鎖と共に中親和性ILー2Rを構築するサブユニットであること、さらにαβγ鎖の複合体によって完全な高親和性ILー2Rが構築されることが示唆された。また、このγ鎖はリンパ球に特異的に発現していることも示唆された。さらに本研究ではγ鎖を精製するこ とによってその部分アミノ酸配列を決定し、これをもとにγ鎖のcDNAクロンの単離に成功した。この単離したγ鎖cDNAをβ鎖cDNAと共に線維芽細胞(L929)に導入することによって中親和性ILー2Rを構築することができた。γ鎖遺伝子の構造からγ鎖がサイトカイン受容体ファミリ-の新たなメンバ-であることも分った。
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