研究概要 |
IL-2受容体サブユニットとしてすでにα鎖とβ鎖が知られ、受容体からの情報伝達にはβ鎖が機能していることが示されている。しかし、β鎖単独あるいはα鎖と共に発現させただけでは機能的なIL-2受容体の構築がみられない場合があり、完全なIL-2受容体構築にはα鎖、β鎖以外にもサブユニットが存在することが示唆されていた。我々はこれまでβ鎖に会合した細胞表面蛋白分子p64がIL-2受容体の第3のサブユニット、γ鎖である可能性を指摘してきた。本研究ではIL-2受容体のγ鎖(p64)の完全な遺伝子を単離し、IL-2受容体構築に関わるγ鎖の機能的役割を明らかにした。 IL-2存在下でβ鎖に会合してくるγ鎖を免疫沈降法、電気泳動法の組み合せにより精製し、アミノ酸配列を決めた。それをもとにγ鎖cDNAを単離し、解析した。その結果、γ鎖はサイトカイン受容体スーパーファミリーに属し、血球系細胞に特異的に発現していることが明らかとなった。α鎖β鎖γ鎖からなるヘテロ三量体、あるいはβ鎖γ鎖からなるヘテロ二量体を線維芽細胞に再構築させると、高親和性あるいは中親和性IL-2受容体をそれぞれ形成し、IL-2結合後IL-2を細胞内ヘインターナリゼーションした。以上の結果より、γ鎖は、β鎖とともに高親和性あるいは中親和性IL-2受容体の形成及びIL-2のインターナリゼーションに必須な分子であることを証明した。IL-2受容体のサブユニットのcDNAを導入して、高親和性あるいは中親和性受容体を再構成した線維芽細胞でIL-2刺激によりチロシンキナーゼの活性化、及び核内転写因子c-myc,c-fos,c-jun遺伝子の発現誘導が認められた。α鎖β鎖のみ発現している細胞ではこれらのシグナル伝達は認められないことから、IL-2受容体のサブユニットとしてβ鎖とγ鎖がシグナル伝達に必須の分子であることが明らかとなった。
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