研究概要 |
マウスIL-1R(タイプI)の細胞内領域のうち,シグナル伝達における機能に必須な領域の同定を行なった。方法としては野性型または変異型マウスIL-1RのcDNAをふくむ発現ベクターをヒトT細胞株Jurkatに遺伝子導入し,細胞表面に発現されたマウスIL-1RをIL-1α変異体(マウスIL-1Rのみに働く)で選択的に刺激する。 このときIL-8遺伝子のエンハンサー,プロモーター領域を含むCAT発現ベクターを同時にJurkat細胞に遺伝子導入し,IL-1α変異体による刺激が,変異型マウスIL-1Rを通して伝達され,CAT活性が誘導されるかどうかを調べた。その結果,マウスIL-1R細胞内領域のうちアミノ酸364-474の領域における種々の部分欠損変異により,そのシグナル伝達能が失われることがわかった。このことから昨年度明らかにしたC末端領域の要求性もあわせ,細胞内領域の幅広い領域がシグナル伝達に関する機能に必要であることが明らかとなった。このマウスIL-1Rの機能必須領域及びC末端境界領域には核移行シグナル配列様エレメントが存在しているが,これらエレメントにおけるアミノ酸置換変異はIL-1Rのシグナル伝達能に影響を及ぼさなかった。IL-6レセプターgp130分子では他のサイトカインレセプターで保存された領域,特にbox1,box2とよばれる疎水性エレメントがシグナル伝達能に必須であることが知られている。興味深いことに前述したIL-1R細胞内領域の機能必須領域(アミノ酸364-474)のうち,アミノ酸427-474の領域がこのgp130分子の機能領域と相同性を示すことがわかった。さらにIL-1Rのbox1,box2様疎水性エレメントにおけるアミノ酸置換変異によりIL-1α依存的なCAT誘導活性が失われることから,IL-1Rにおいてもサイトカインレセプターで保存された基本構造がそのシグナル伝達に関する機能に必要であることが示唆された。
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