研究概要 |
IL-1,TNFによるシグナル伝達経路,特にIL-8産生誘導に関与するプロテインキナーゼを検索する基礎的知見を得るため、各種プロテインキナーゼ阻害剤を用い、IL-1,TNFによるIL-8産生誘導、IL-8遺伝子発現誘導への影響を調べた。IL-8遺伝子発現誘導については、IL-8遺伝子上流域(-133- +44)を有するCATベクターを用いたCAT活性の誘導を測定することにより調べた。その結果、胃癌細胞株MKN45におけるIL-1,TNF刺激によるIL-8産生およびIL-8遺伝子の活性化は、プロテインキナーゼ阻害剤H7により25-50μMの濃度で効率よく阻害されるが、一方、同濃度の阻害剤HA1004は、IL-8産生およびIL-8遺伝子の活性化に関してIL-1,TNFの作用を抑制しないことがわかった。一方、プロテインキナーゼ阻害剤スタウロスポリンは、50nMでホルボールエステル、PMAによるIL-8産生誘導およびIL-8遺伝子の活性化を顕著に抑制するが、IL-1,TNFの作用は抑制しないことがわかった。これらの結果から、IL-1,TNFによるIL-8遺伝子発現誘導には、H7感受性、スタウロスポリン非感受性の経路が関与することが示唆された。これまで我々のグループは、IL-1,TNFによるMKN45細胞でのIL-8遺伝子発現誘導に、IL-8遺伝子上流域に存在するNFkB結合部位およびAP-1結合部位が重要であることを明らかにしているが、今回ゲルシフトアッセイの結果から、プロテインキナーゼ阻害剤H7は、IL-1,TNFによるNFkBのDNA結合活性の誘導を阻害しないことがわかった。このことから、NFkBのDNA結合活性の誘導経路とは異なるH7感受性経路がIL-1,TNFによるIL-8遺伝子発現誘導に必要であることが示唆された。またチロシンキナーゼ阻害剤であるハービマイシンAは、1-2μg/mlの濃度でMKN45細胞でのIL-1,TNFによるIL-8産生を阻害することから、IL-8産生誘導のいずれかのステップにチロシンキナーゼが関与していることが示唆された。
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