研究概要 |
マウスIL-1R(タイプI)の細胞内領域のうち,IL-8遺伝子発現誘導に関するシグナル伝達に必須な領域の同定を、Jurkat細胞での一過性発現系を用いて行った。その結果、マウスIL-1R細胞内領域のうち、C端側の境界領域をはじめとしたシグナル伝達能に関する機能必須領域を決定した。またIL-1R細胞内領域の一部とIL-6Rのβ鎖gp130分子との間で相同な領域が存在することを見い出し、アミノ酸置換変異の実験から、このIL-1Rのgp130相同領域がそのシグナル伝達に関する機能に重要であることを示した。 IL-8遺伝子のプロモーター領域のIL-1,TNF応答領域の解析では、線維芽細胞株8387でIL-8遺伝子上流のNFkBおよびNFIL-6結合部位が、また胃癌細胞株MKN45等で、NFkBおよびAP-1結合部位がそれぞれIL-1,TNFに対する応答に重要であることが判明し、細胞の種類によってIL-1,TNFによるIL-8遺伝子発現調節に関わる転写因子が異なることが示唆された。またMKN45細胞では、IL-8遺伝子発現誘導に関してTNFとIFNγとの相乗性が見られ、この相乗性がNFkBの活性化レベルで起こっていることを見いだした。さらに、B型肝炎ウイルスX蛋白によりIL-8遺伝子発現が誘導されることが見い出され、IL-8がHBV感染時により産生され、肝炎の発症に関与する可能性が示唆された。 最後に、研究代表者は1987年、好中球走化性因子IL-8を発見して以来、IL-8の生理活性や炎症性疾患との関連性を調べている。本研究では、虚血後再潅流に関するウサギでのモデル実験で、IL-8中和抗体の静注により、肺での再潅流障害および好中球の浸潤が抑制されることを見い出し、またLPS誘導性皮膚炎モデルでは、LPS投与局所への好中球の浸潤と皮膚炎での発赤が抑制されることがわかった。これらの結果から、IL-8が炎症性疾患の病因に密接に寄与していることが示唆された。
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